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 リルフィも目に涙を浮かべて頷く。私は……

「解った。心配しなくても大丈夫だ」

 二人をギュッと抱き締める。この温かさを感じる度に、私は至上の幸福に包まれる。幾ら触れ合って、抱き締めても足りない程に愛しい。フィーネの魂を受け継いだシェルフィア、そしてリルフィ。彼女達と共に生きているという事が、私にとってどれだけ大切か。彼女達がいない世界など私には無意味に等しい。

 傲慢かもしれないが彼女達には生きていて欲しい。ママであるシェルフィア、最愛の一人娘リルフィ。例え私を失ったとしても。

 

 私は、愛する人が幸せに生きてくれるならば、自らの命すら惜しくは無い。

 

 それが『覚悟』だ。この覚悟は今に始まったものでは無い。フィーネを獄界に救いに行く時も、自分の身を案じはしなかった。シェルフィア、リルフィの為ならば喜んで身を差し出せると、常日頃思っていた。

 だが、この『覚悟』は『思い』では無い、『決定』だ。覚悟が現実になる。

 

 シェルフィア、リルフィが私の胸で肩を震わせている。

 ごめん、私はたった一度約束を破る。

 

 粉雪が、鎮魂歌を歌っているかのようにミルドを舞う。ほんの数時間で、半分の人間が消えた。シェ・ファを放置すれば、少なくとも今日中には全ての生命が消えるだろう。

 私はそれを止める。自分の命と引き換えに。

 

 此処は約束の場所。永遠の約束があるから肉体が死んでも、何度でも巡り会える。魂は永遠に君と共に。

 悲しまないで。私は君の元へ必ず帰るから……

 


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