リルフィが躊躇いなく声を張り上げると、場にいる皆は頷いた。今は、リナンの知識に賭けてみるしかないだろう。
「『転送』!」
エネルギー膜が6人を包み、目の前の景色が消えて高速で流れていく。そして、リナンの中心部へと到着した。だが!
「この街も眠ってるよ!」
ウィッシュが叫んだ!それもその筈だ……見渡す限り、街の中にいる人間は地面に倒れ眠っているのだから……
この街は、かつて天使だった者が多く住んでいる。ここで暮らす者は知識欲が旺盛で、科学技術だけでなく哲学や言語の分野でも研究を行っている。天界の知識、人間界の知識が描かれた本が無数に存在するこの街の中央図書館には私さえも知らない事柄が多くあるのだ。そして、この街の暮らしは慎ましやかだ。レンガ造りの家が立ち並び、どの家も綺麗に手入れと掃除がされている。だが、豪奢な飾りつけなどは一切無く人々は高級な食物も滅多に食べないようだ。そうする理由は、一般人が憧れるような奢侈な暮らしには興味が無く寧ろ知識を深める事で心を豊かにする事に価値観を見出しているからだ。
「早く図書館へ!」
皆口を揃えてそう言った。一斉に中央図書館へと駆ける!ほんの数分、街の奥へと走ったがこの事態の深刻さが身に染みて伝わってくる!本当に、誰一人として起きている者はいないからだ。このまま、万が一眠りから醒めないような事があればいずれ死に至るだろう。生きている者は常にエネルギーを消費しており、眠ったままの状態では食物というエネルギーを摂取する事が出来ないからだ。
「着いたぜ!」
セルファスが、図書館の門を勢いよく開こうとした時だった!
「皇帝、そして皆様お待ちしておりました」
「ディクト!」
驚いた事に、ディクトは眠っていなかったのだ!一体何故だ?
「皇帝、そんな怪訝な顔をされなくとも……この図書館には、強力な結界が張られているのをお忘れですか?」
そうか……確かにこの図書館には、物理的な攻撃や神術などのエネルギーを反射するように結界を張っている。この施設はそれ程重要な役割を持っているからだ。
「図書館に居た学者は既に調査を開始しております。さぁ、原因を探りましょう!」
私達は暫くの間唖然とした。私達が焦っている間には既にディクトを含む学者達は調査を始めていたというのか?その冷静さと頼もしさに言葉すら出なかったからだ。しかし、今すべき事は決まっている。
「わかった!まずは、私達が見てきた街の状況を話そう」
学者達に囲まれ、私達はフィグリル、ミルド、リウォル……そして、セルファス達が見てきた街の状況を率直に話した。