「今日は父さんと母さんが忙しかったから、聖石を使ってぼく一人で来たんだ!」
「えっ!?ウィッシュ一人で来たの?」
「うん。ぼくはどうしても交流会に来たかったから!」
ウィッシュは嬉しそうに笑った。彼は7歳なのに、交流会に参加する為に『転送』の神術が込められた聖石を使って一人でやって来た。セルファスの子供らしく、なかなか度胸のある行動だ。
「ウィッシュ、凄いね!今日は、わたしのパパとママも参観には来ないけど学校頑張ろう!」
「うんっ!」
そう言って二人は駆け出した。リルフィの長い真紅の髪が揺れる。その隣で、金の短い髪と青い目を携えたウィッシュが走る。二人は、物心がつかない時から一緒だった。ウィッシュは父母と共にミルドに住んでいるが、父母がフィグリルを訪れる度に一緒についてきたからだ。
この日学校は9時〜15時までで、色々な授業が行われた。数学や言語、歴史や料理、合同体育などだ。どの授業も今後の生活に役立つようなものばかりで、かつてルナリート達天使が天界で教えられたものとは全く異なるものだった。
〜冒険へ〜
「リルフィちゃん、バイバーイ!」
「うん、またねー!」
「リルフィちゃん、今度また遊ぼうね!」
「うん、約束だよ!」
昼の3時。学校の授業が終わり、リルフィは多くの友達に囲まれていた。毎日学校で会う友人に加えて、今日は月に一度だけ遥々中央学校まで訪れる友人もいる。リルフィは、友達が好きだし大切にする。だから、必然的に友人の数も多いのだ。
「リルフィちゃん、今度会えるのは来月だけど元気でね!」
「ありがとう、元気でね!」
こうして皆が去った後、ウィッシュも近付いてきた。
「リルフィ、今から遊ぼうよ!」
ウィッシュは嬉しそうだ。リルフィは殆ど一月に一度しか会えない幼馴染。それ以上に、彼は彼女に惹かれている。物心付く前から一緒にいた女の子。一つ年上のお姉さん。そして何より、リルフィの優しさや強さに接して好意を持たない筈が無かった。
「うん、いいよ!でも5時までには帰らないとダメだからね」
リルフィは笑顔でそう答えた。ウィッシュは幼い頃からずっと仲の良い幼馴染。大切な友達の中でも、付き合いが長い分ウィッシュは特に大切だ。
「わーい!ちゃんと5時までには帰るようにするよ」
「何して遊ぶの?」
「楽しい事だよ、リルフィちょっとだけ目を閉じて」
そう言うと、彼女はすぐに目を閉じた。リルフィはまだ人を疑う事を知らない。というより、騙す人間がいないから疑う必要もないのだ。
「レニーの森へ!」