「……急に色々な事を伝えて悪かったと思う。俺の選択は変わらないが、リバレス君自身の事はゆっくり考えてくれていい。でも、ルナ達が帰ってくるまでにはリバレス君の結論が欲しい。結論が出るまでは……ゆっくり休んでくれ」
ハルメスさんはそう言って、席を立った。冷たい風だけがわたしを通り抜ける。わたしは何をする気にもなれず……唯空を眺めていた。
その時、星がいつもより眩しく感じたのは忘れない。
〜幸せの代償〜
わたしは……ルナのお陰で今まで生きてこられた。ルナの傍で時を重ね……楽しくて幸せだった。生まれてからずっと今まで一緒だったわねー……たった424年だけど、わたしの一生はとても輝いていたと思う。だって、わたしはルナが大好きだから。ずっとずっと……ずぅーっと一緒にいられると思ってた……それがわたしには当たり前で……それがわたしの生き方そのものだったから。でも、随分昔から覚悟していた事があるのよー、『もし、ルナに不幸が起きて……わたしがそれを助けられるのなら、喜んでこの身を差し出す』っていう事をね。だから、わたしは決めたの。ハルメスさんとの話から丸一日考えていたけど、もう迷わない。わたしは、夕闇の中をハルメスさんの下へ飛んで行った。
下弦の月が照らす城の屋上で……ハルメスさんは待っていた。まるで、わたしが来る事を悟っていたかのように……
「ハルメスさん、わたしは、ルナのお陰で今まで楽しく……そして幸せに生きてこれましたー……でも、わたしは……ルナが悲しんだり苦しんだりする姿は見たくありません。もし、ルナが天界と天翼獣について知れば……天界を維持しようとするでしょう。そうなれば……ルナはシェルフィアと幸せになれません。わたしは、ハルメスさんと共に……自分を捧げる決意をしたんです!『愛する者』の為なら何でも出来る。それがわたしにも良くわかりました」
わたしが、そこまで話すとハルメスさんはわたしの手を握っていた。
「……リバレス君……すまない。こんな辛い未来に巻き込んでしまって!」
ハルメスさんの目から一筋の涙が流れていた。こんなに強い心の持ち主なのに、他の者に対しては深い慈しみに溢れているんだ。
「……ハルメスさん、泣かないで下さい!わたしの方が泣き虫なんですからー!」
そう言ったわたしの目からも涙が止まらなかった。
そして、二人で約束したのよー……