「リバレス君……君は、ルナ達が帰ってくるまでに俺の下で修行だ。これからの戦い、今のままでは危険だ」
えっ?わたしは思わず目を見開いた。確かにわたしは力不足かもしれないけど、今の状況でわたしは修行するだけ?どう考えても不思議だったけど、ハルメスさんはルナのお兄さん。ちゃんと考えがあるんだろう。
「……わ、わかりましたー!」
少し声が上ずりながらも何とか返事をした。でも、その後すぐにルナがハルメスさんに聞き返す。
「兄さんは?」
「俺はリバレス君の修行と並行して、単身で『ある調査』をする。この世界の命運を左右する事だ」
やっぱりそういう事なのねー……ハルメスさんの顔には深い覚悟が刻まれていた。
「……わかりました。全員の健闘を祈りましょう!」
ルナの掛け声と共に、皆で手を重ねた。平和と幸せが訪れるまでは戦い続ける。わたしも覚悟を決めた。
でも、わたしがルナ達と離されて修行する事には、もう一つ深い意味があったのよー……
この晩、ルナとシェルフィアと一緒に昔話で夜遅くまで盛り上がった。楽しかったねー、200年前にフィーネと初めて出会った頃の話……船で遭難した時の話……ルナが鈍感だった事やフィーネがドジだった事とか、色々話した。でも、今二人が一緒にいられるのはわたしのお陰だって言われた時は照れちゃったわよー。そんな風に、この夜は笑顔が絶えなかった。それで、つくづく思ったの。
『わたしは二人ともやっぱり大好き』だってねー……
〜ハルメスと二人で〜
翌朝、ルナとシェルフィアはリウォル王国への出発準備を終えていた。
「気をつけてねー!」
今すぐにでもここを発ちそうなルナとシェルフィアにわたしは声をかけた。二人が相手をするのは普通の人間だけど、一応敵国だから心配だった。
「お前も頑張れよ!すぐに帰ってくるからな!」
そう言ってルナはわたしの頭をポンポン叩いた。わたしが心配したりすると、ルナはいつもこうやって安心させてくれる。昔から、そうしてくれるの好きだったなー……
「はーい!頑張りまーす!」
わたしは何だかとても元気が出て大きな声でそう返事をした。
その後、ハルメスさんとわたしに見送られながら二人は出発した。生まれてきた時からずっと一緒だったルナを、シェルフィアに独占されているような気がして少し寂しかったけど、それが『愛』だから仕方ないわねー……と思ったりもしていた。
「さてと、リバレス君。約束通り修行を始めようか?」