「ただいま!」
晩御飯の支度を済ませて、しばらく経ってからお父さんは帰ってきた。
「お帰り!今日も遅かったわね。心配してたのよ!」
私は、お父さんの荷物と上着を受け取った。そして、それを収納場所に収めて食卓に戻る。
「フィーネ、17歳の誕生日おめでとう!大した物じゃないけど、受け取ってくれよ」
そう言って、お父さんは私に少し大きめの箱を手渡した。
「もう、お父さん!プレゼントは要らないって言ってるのに!最近は、鉱山に魔物が沢山現れて危ないから……お金を貯めて、この村を出ようって約束したでしょ!?」
私はそう言いながらも、内心嬉しかった。私は生まれてから今まで、誕生日を忘れられた事がない。それに、毎年お祝いをしてもらってきた。今はお母さんと一緒に笑い合ったりは出来なくなったけど、お父さんはずっと元気だし、ここにはいないお母さんだって心の中にはちゃんといる。だから、私は毎日を元気に送る事が出来るんだと思う。
「まぁ、そう言うなよ。中身はケーキだから!本当はもっと良い物を買ってあげたかったんだけど、フィーネと約束してたからな」
お父さんは少し申し訳無さそうな顔で……そしてとても嬉しそうな顔でそう言ったのだった。
「うん……ありがとう!お父さん大好き!」
この日は、二人で笑いながら夕食を食べた。お母さんみたいに上手には作れなかったけど、頑張った甲斐もあってか今日は今までで一番美味しく出来たような気がした。それは……すぐ傍にお母さんがいたような気がしていたからかもしれない。
「フィーネ」
夜遅く……暖炉には赤々とした火が揺ら揺らと燃えている。窓は曇っているけど、月明かりと星々の明りが差し込んでいるのが見える。お父さんは明日仕事が休みなので、今日は良い潰れるまでお酒を飲んでいた。お父さんが私の名前を呼んだのは、テーブルにうずくまっているお父さんに毛布をそっとかけた時だった。
「どうしたの、お父さん?」
私は顔を上げようとせず、小刻みに震えているお父さんを見つめた。こんなお父さんは見た事がない。
「……うぅ……ごめんな、フィーネ。お前はお母さんに似て、最高の娘だ。なのに……苦労ばっかりかけてるよな」
お父さんは泣いていた!今までに、お父さんが泣いているのを見たのは……お母さんが死んでしまった時だけだった。だから、私は物凄く驚いてしまった。
「……お父さん!お父さんが謝る事なんて何もないわ!私、今はお父さんが元気に生きていてくれるだけで幸せなんだから!」