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「可愛らしい花が咲き誇ってますね」

 シェルフィアはしゃがみこみ、一面に咲く花を見つめた。どこまでも真っ白に咲き乱れる花達を……

「この花は」

 私はこの花に見覚えがあった。そう、私が天界に住んでいた頃、部屋で育てていた花と同じ種類の花だ……

「ルナ草ねー」

 そう、この花の名は『ルナ草』だ。花が咲き始めるのは必ず満月の夜だからそう名づけられた。

 そうして私達がしばらく花を見ていると、どこからともなく聞いた事の無い声が響いた。暖かく、穏やかなそよ風のような声。

「(ルナリート様……お久し振りです)」

 頭の中に直接響く声……転送の神術と似ているが少し違う。私達は、声がする方に近付いた。すると!

「お前は……まさか、私が天界を去る前夜に窓から飛ばしたルナ草か!?」

 一際大きく、そして誇らしげに咲き揺れるルナ草に私は問いかける。

「(はい、その通りです。あなたのお帰りを心待ちにしておりました。見て下さい……この花達を……みんな私の子供なのです)」

 そういう事か……私はこのルナ草を『保護』の神術で守りながら飛ばした。その後の200年の間に根を張り、実を結び、種を飛ばし……こんなに広大な花畑に変わったのだろう。それにしても……植物が意識を持つのは天界でもごく稀な事だ。10000年に一度の奇跡と言える。

「そうか……良かったな。これからも元気に花を咲かせるんだぞ。私達は先を急ぐ……話は後にしてくれ」

 私は嬉しかったが、今はそれどころではない。神術で水を作り出して、このルナ草に注いだ後に走り出す。だが!?

「(お待ち下さい!私が……ここでお待ちしていたのは、あなたの力になる為です!)」

 ルナ草がそう言った瞬間……光で出来た眩い剣へと姿を変えたのだ!

「お前は……一体!?」

 私はその剣に近付き、そう話しかけた……

「(私の魂……『神剣ルナリート』として捧げましょう……この先で必ずお役に立ちます!)」

 神剣……魂を剣に変えたもの。しかもそれを使う者は、エファロードであり……なおかつ神剣の魂は、そのエファロードを深く信頼していなければならない。だが、それを手にすればどんな剣よりも強大な力を使う事が出来る。その理由は、オリハルコンの剣が精神力の一部を破壊力に変換出来るのに対して、神剣は精神力を注ぎこむ分だけそれが破壊力に比例するからだ。

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