〜もう一人のエファロード〜

 贖罪の塔で、ルナリート達が頂上に到達するのと同時刻……ハルメスは『獄界への道』の最下層にいた。

「ルナ達もそろそろ天界に着く頃だな」

 ハルメスはたった一人、獄界から来る魔の大軍を待ちうける。その心にはやはり幾分かの不安があった。

「ティファニィ……お前が死んでからずっとやめていたが」

 彼はそう呟くと、胸ポケットから1本の煙草を取り出した。ティファニィの生まれた村では、煙草が名産品だった。ティファニィや村の人と仲良くなり、彼は煙草を覚えた。そして、ティファニィに貰った煙草に『停止』の神術をかけてずっと持っていたのだ。ティファニィは、ハルメスが煙草を吸う姿が好きだった。だが、彼女が死んでから……ハルメスは煙草の吸い方さえ忘れていた。

「これを吸うと、あの頃を思い出すよ」

 彼は煙草に火をつける。すると、空間に紫煙が舞い始めた。戦いの前だというのに、穏やかな空気だった。

「……よし。大事な弟の為だ!戦うぜ!」

 煙草を吸い終えて、ハルメスは剣を抜いた。久々に着る黒の戦闘服……準備は万端だ。

「俺の勘ではもうすぐ来る!」

 計画の開始までは正確に言うと8日残っていたが、彼の勘は魔の襲来は予定より早いと言っている。すると……

「読み通りだな!」

 この瞬間、最下層にある彫像が光り出したのだ!魔が現れる前兆!

 

「グアァァアァァ!」

 

 次の瞬間、数百体……いや、数え切れない程の魔の大軍がこの最下層を埋め尽くした!

「なかなかの団体様だな。行くぜ!」

 ハルメスは体を『光膜』で覆った!これでこの場にいる魔の攻撃は一切無効だ!

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