前ページ

「リバレス!飛ぶんだ!」

 俺は叫ぶ!落下を食い止められれば!

「ルナー!飛べない!この螺旋の中じゃ、飛べないみたい!」

 リバレスが半狂乱になって叫ぶ!飛べなければ、死に向かって落ちるだけ!?

「フィーネ!力を貸してくれ!もうすぐなんだ!」

 俺が目を瞑って、そう叫ぶと体が軽くなった!そう……光の翼が現れたのだ!

「これで安心?じゃない!」

 光の翼を開いて、上に戻ろうとするが全く戻れない!下に何か見えてきた!暗黒の海だ!

「ルナー!下にいるのは、全部死人よー!」

 暗黒の海に浮かぶのは……哀れな骸骨の群れ……そして、呪われた彼らは俺達を引き込もうとしている!

「ルナー!何とかしてー!お願い!」

 リバレスが泣きながら叫ぶ!そうだ……この螺旋が、魔術で作られた『空間』ならば!

「禁断神術……『滅』(ruin)!」

 俺は、宝石シェファを握り締めて叫んだ!この宝石は、俺とフィーネ、二人の幸せな未来のための象徴!頼む!俺はこんな所で終わりたくは無い!

「キィィー!」

 耳が張り裂けるような音が響いた!その音で目を開けると、死の海が眼前に迫っていた!

「キャァァアァァー!」

 リバレスの叫び声が響く!その瞬間、突如目の前が光に包まれた!

「カッ!」

 光が消えてゆく中……俺はゆっくりと目を開いた。

「見事だ」

 目の前には、ファングの金色の目があった!死の空間は消えたようだが、俺はすぐさま身構える!だが……

「ワシは、もう貴様と争う気はない。今の貴様の生命力は2200万。『死闇』も破られた今、ワシに勝ち目はない。だが、次の階のお方には貴様は絶対に勝てない。だから、ここは通してやろう」

 突然、ファングがそう言って口の中から鍵を取り出した。

「……いいだろう。俺は、本来戦いなんて望んでいない。お前に怒りが沸かないわけではないが、負けを認めるなら手は出さない」

 力が戻った今の俺が、ファングと戦えば確実に勝てるだろう。奴は狡猾な魔だが、今ここで殺す必要も無い。

 俺は、鍵を取って扉へと歩いた。一応、背後からの奇襲にも警戒しながら……

次ページ