〜漂流一日目〜

 早くも、漂流初日の夕方が訪れた。周りは全て海……だが、その海が全て夕焼けを呈している。その美しさは圧巻だった。

「それじゃあ、そろそろ夕食を作りますよ!」

 フィーネは、相も変わらず笑顔で私に話しかけた。

「いや、今日はいいよ。私は、君やリバレスが眠ってから一人でゆっくり食べるよ。食糧は自分用に持ってるしな」

 と、私はフィーネにそう言った。勿論、この言葉には意味がある。

「え!?でも、お腹が空いたでしょう?遠慮しないで下さいよ!」

 フィーネは不思議そうに私に問い掛ける。今まで、私はそんな事を言った事が無いので当然だが……

「この船に乗ってる間はいいよ。私は、天使だから元々余り空腹になったりしないしな。君が持ってる食糧は君が一人で食べるんだ」

 嘘だった。人間界に堕ちてからは、人間と同じように空腹になる。

「でも!」

 尚も、フィーネは私を心配して食い下がる。

「いいから。細かい事は詮索しない約束だろ。私は夜に一人で食べるから何も心配するな」

 そう言って私は、海の方に視線を移した。我ながら冷たい態度だったと思う。

「せっかくルナさんと仲良くなれたと思ってたのに……わかりました。それじゃあ、私一人で食事を取らせて貰いますね」

 フィーネは悲しそうに俯きながら、船室へと帰っていった。

「すまない」

 私は彼女に聞こえないように呟いた。そこに、その様子を見ていたリバレスが現れた。

「どーして、あんな嘘をついたのよー!?ルナが持ってる食糧なんて一日分ぐらいしかないのにー!」

 リバレスは怒って、私に体当たりしてきた。

「痛い痛い!私とフィーネでは頑丈さが違うだろ!?この船には、二人で食べたら一週間と持たない食糧しかないんだ。漂流は正直何日になるかわからないし!それに、ああでも言わないとフィーネは気にして食事を取らないだろ!?」

 私は怒るリバレスに正直に訳を話した。

「もー!相変わらず甘いんだから!それとも、相手がフィーネだからー?」

 と、リバレスは半分怒りながらもからかってきた。

「違うって!私は堕天使、フィーネは人間なんだから、優しくして当然だろ?」

 私は少し焦ってそんな返事をしてしまう。

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