「ま……待って下さい!どうか、この方は助けて下さい!悪いのは私なんです!人間を助けて欲しいって頼んだから!殺すんなら私だけにして下さい!お願いします!」
フィーネは、その場に跪き魔に懇願した。屈辱だろう。私が不甲斐ないばかりに!
……私……いや、『俺』にもっと力があれば!
「却下だ。だが、そんなに死にたいならお前から燃やし尽くしてやろう!これが本物の炎だ!」
魔にかつてないほどの力が集まる。これを受ければフィーネは即……死!
フィーネは……俺を助けて……人間を愛して……世界を愛して……喜んで……悲しんで……幸せを求めて……それが、焼き尽くされる。嫌だ!俺はフィーネを失いたくない!
「死ね!」
魔から炎が放たれた。が、その動きはとても緩慢だった。この感覚は……神官と戦った時と同じ……
俺は、炎の前に立ちふさがり、俺達3人全てを『保護』の神術で守った。この力は……さっきまでの数十倍!
炎が炸裂する。しかし、俺の保護の膜には傷一つつかなかった!それに、傷の痛みも消えていた!完治している!
「待てよ、貴様の相手は俺だろう?」
俺は、その瞬間オリハルコンの剣を抜き魔を弾き飛ばしていた!
「グァッ!速い!それに、さっきの神術の強度は何だ!……貴様は!」
さっきの『滅炎』では傷一つ無かった魔に剣が致命傷を与えていた。
「わからないのか!?貴様のような愚者は俺に触れる事すら出来ないんだよ」
俺は自分の変化に気付いていた。天界で神官と戦った時程ではないが、力が満ち溢れていることに!
「まさか……まさか……貴様がエファロード!?」
俺の様子を見た魔が急に焦り始めた。
「エファロード?何の事だ!?」
エファロード?堕天の直前に『神』が俺に言った言葉……
「第一段階……『銀の髪』!まさか……そんなはずは無い!これでも食らえぇぇぇ!地獄の業火だぁぁ!」
魔は我に返り、おそらく最高の魔術であろう『地獄の業火』を放った。
「無駄だ」
俺は高等神術である『絶対零度』を使った。その瞬間!
魔もろとも、見渡す限り一面が凍りついた!魔のいる方向の海まで凍りついている!
俺は、氷の彫像と化した魔にゆっくりと近付いた。