「あなたが!私の村も襲ったのね!?」
彼女は、動けない体を揺らし怒りの言葉をぶつけた。
「そうさ。苦しむ人間を見るのは楽しくてたまらないんでねぇ……クククッ!」
「私はお前を許さない!」
フィーネは、歯を食い縛り口から血を流しながら叫んだ!
「まぁ、そう言うなよ……一つ取引をしようじゃないか?オレは……この世界を全て毒で染め上げるつもりだが……お嬢さん、あんたが、この果実を一つ食べきれたら、オレはこの世界から撤退しよう……どうだ?」
という言葉の後で、この魔物は体の一部から薄気味悪い緑色の果実を取り出した。
「……本当なの?」
フィーネは自分が無力なのを知っている。戦って勝つ事など出来はしない。『でも、ここで私がその猛毒であろう果実を食べる事で多くの人が救われるなら……この魔物は私を騙しているかもしれないけど、私が人を救えるなら』……という気持ちになっていた。
「魔は、一度言った事は絶対に取り消さないのさ……約束を破るくらいなら死んだ方がマシだからねぇ」
と、魔物はフィーネを説得した。フィーネは、相手が魔物であっても人間を救いたいという気持ちでいっぱいだった。
「……わかりました。食べます」
という一言を発した瞬間、フィーネの両手両足の枷は外れた。そして、醜い魔物から果実を受け取った。
「さぁ、食べるんだ!」
フィーネは、思い切ってその果実をかじった。すると……
「う!」
彼女は全身に毒が回るのを感じた。恐らく数分もしない内に死ぬだろう!
「バカめ!魔を信じる人間がどこにいる!?ヒャハハハハ!愉快でたまらないねぇ!」
その時、フィーネは自分の愚かさを感じ激しい憤りの中で意識を失っていった。
「そうか……愉快か。それなら、笑いながら死ぬがいい!」
私が到着したのはその時だった。既にフィーネは毒を食べてしまっている!遠くから声は聞こえていたのだが!
「誰だ!?」
魔は私を驚きながら見た。
「貴様に名乗る名などない。生憎、時間もない。フィーネが毒で死ぬ前に消えてもらう」
私は剣を抜いた。リバレスも臨戦態勢に入る。
「お前が例の堕天使か……許してくれ!」
と、魔は急に大人しくなり跪いた。私は話し合いで解決するなら、と剣を下ろした。
「なんだ?許して欲しいなら、フィーネと人間にかけた毒を解除しろ」