「(じゃあ、わたしも戦った方がいいかもねー)」
「(最悪の場合は頼む。)」
と会話した後で、遠くの方で声がするのに気付いた!
「う……うわぁぁ!」
その絶叫のする元へ私は駆け寄った。場所は、街と森を繋ぐ道の入り口だった。そこにはフィーネも居た。
倒れている男は、年にして20代半ばだろう。しかし顔は青褪めて、背中に傷を負い大量の血を流していた。
「どうしたんだ?」
と、私は冷静に訊いてみた。
「う……うぅ……俺は、俺は見たんだ!……森の畑の作物や果樹に魔物が毒をばら撒くのを……毒を!」
必死に逃げて来たんだろう。そして、この男も病に侵されているんだろう。ガリガリに痩せ細っている。
「もう、大丈夫だ」
そこに、その男の身内らしき者がかけよってきて、大急ぎで男を家へと運んでいった。
そして、さっきまで近くの家々の窓からこっちを見ていた者がいたが、全て窓を固く閉ざして人の気配が無くなるのを感じた……
「……この街の様子は……数年前に母が亡くなった時と全く同じです」
と、フィーネは深刻な顔をして辺りを見回した。その表情は悲しみと怒りで凍りついている。
「……ひどい事をするな……これは、君の言った通り、魔物の毒がもたらした病だと思う。元凶はどうやら森にいるようだから、私が始末してくる。おそらくはそいつを倒せば毒は消えるだろう。相手は手強い。君は宿で待っていろ!」
と、私は事の重大さを把握して、フィーネを危険に晒さないように言い聞かせた。
「そんな……イヤです!決して迷惑はかけません!私も連れて行って下さい!私もそいつを許せないんです!」
と、フィーネは必死で反論して懇願した。この状態の彼女を大人しくさせるのは難しいな……
「(何言っても、多分……ううん、絶対ついてくるわよー。やれやれねー)」
と、リバレスはまたも私の胸中を言い当てた。さすがは付き合いが長いだけはある。
「仕方ないな……足手纏いになるなよ。それと、絶対に私から離れるな。約束できるな?」
と、私は仕方なくフィーネを連れて行く事にした。
「はい!絶対に約束は守ります!」
そう、いつも通り元気に振舞っていたが、私は彼女が剣の柄を強く握り締めているのを見逃さなかった。よほど強い怒りなんだろう。