「いらっしゃい!何が入り用だい!?」
中年で小太りの男店主が私に愛想良く声をかけた。
「食料と水が欲しいんだが、どうすればいい?」
私は店に入ったものの、食料をもらう方法がわからなかった!
「異国の人かい?こんな銀貨で商売してるんだがね」
そう言って、店主は私に銀の貨幣を見せた。そういえば、人間界では物を得るのに対価を支払わねばならないと本で読んだ事がある。
「これじゃあ駄目か?」
私は、荷物の中から水を飲む為に持ってきた純金の杯の一つを取り出した。この杯は天界では大した価値はない。
「こりゃ驚いた!純金じゃないか!これを、銀貨に交換するけどいいかい?」
「ああ。頼む」
すると、店主は袋一杯の銀貨と交換した。
「それで、この銀貨で何と交換できるんだ?」
私は、これで今日一日くらいの食料になればいいと思っていた。しかし……
「その銀貨を全部食料と交換したら、この店が潰れてしまうよ!まぁ、仮に交換したとしたら1年以上は食べていけるね。でも、それは勘弁してくれよ!」
「……そんな事はしないから、今日一日空腹にならない分ぐらいの食料と交換してくれ」
私は、この威勢のいい店主とやりとりするのに少し疲れてきた。
「はいよ!いやぁ、あんた金持ちだねぇ!見慣れない服だし、何よりそんな真っ赤な髪の人は初めてだよ!」
「……わかったから、早く食料を渡してくれ!」
私は一刻も早くここから逃げ出したかった。
「こりゃすまないねー!あんたが今までには無いお客さんだったからつい!それにしても、昨日の鉱山での惨事は知ってるかい?特にフィーネちゃんって子が可哀相なんだよ!フィーネちゃんの父親は唯一の家族だったのに……数年前も」
「もういい!」
私は、店主が置いた食料を取って急いで店を出た。
「(何であの男は聞きもしないことまで喋るんだ!?)」
私は少し腹がたっていた。天界には少なくともあんな奴はいない。私はますます人間がわからなくなった。
「さぁねー人間ってわけわかんないわねー」
リバレスも、少し困惑気味だ。
「私達は、そんな人間と200年も過ごさなければならないんだな」
「……あー!お先真っ暗!って感じよねー」
私達は、店主の図々しい態度や強引さに呆れて、これが人間かと思うとこれから先に不安を覚えた。
しかし店主の言葉にフィーネが出てきた事で、昨日今日の出来事が鮮明に蘇ってきた。