「はぁ……はぁ……ハルメスさん!私は今から輝水晶の遺跡に向かいます!」
私は、背中を強打して壁際に座り込むハルメスさんに声をかけた。
「ルナ、今のジュディアの力は危険だ!だが、まだ間に合う!街の者に遺跡まで送らせるから……急げ!」
ハルメスさんは、そう言ってよろけながら立ち上がった。
「ルナー、わたしも行くからねー!」
床に倒れていたリバレスも起き上がる。私はすぐさま、ハルメスさんとリバレスに『治癒』の神術を使った。
「ルナ!……愛する人を失う事は死ぬより辛い……それは俺が一番よく知っている!絶対に……絶対に、フィーネさんを不幸にするな!そして、必ずフィーネさんを連れてここに戻って来い!」
ハルメスさんは、驚くほど大きな声で……そして真剣な顔で叫んだ。そんなハルメスさんの過去が気になったが、今はそれどころじゃない!
「はい!行ってきます!」
私は、リバレスを肩に乗せて全力で港まで走った!一刻も早くフィーネを救い出す為に!
港に着いて、すぐさま船に乗り込む!そして、船は南南西へ舵を取り進む。しかし、その遅さがもどかしい!
今、空を飛べたら……すぐに助けに行けるのに!一分……一秒……過ぎるのが狂おしい程長く感じた!
そうして、気が遠くなるような三時間が過ぎて……遺跡のある島へと辿りついた。時刻は午後5時……空は夕闇に染まり始めていた。夕陽が、冷たい海と雪の大地を照らし眩しかった。しかし、それとは逆に遺跡の入り口は漆黒の闇に閉ざされている。
「行くぞ……リバレス!」
リバレスは強く頷く。フィーネを助けたい……その気持ちは彼女も変わらないのだろう。
遺跡の入り口は、神殿のような門で……やはり大理石の古代建築様式だった。門をくぐれば、地獄へ続くような地下への階段が伸びている。私とリバレスは、臆する事無く階段を急ぎ足で下りて行った。周りが殆ど見えない闇の階段を……
「あっ……何よーあれは?」
階段が終わり、地下1階に到着した時だった。急に、部屋が『赤色』の光に照らされた。すると、部屋の様子が見えてきた。
「中心にある水晶の壇の光だな」
部屋の中心にある、赤色に光る輝水晶で出来た壇が輝いている。
「あっ!何か文字が書いてあるわよー!」
そう言って、リバレスは壇の上にあるオリハルコンの記念碑を指差した。今は一秒でも先に進みたいのだが……