「どんな作戦ですか?」
私は率直に訊いた。ハルメスさんの事だから、きっと凄い作戦なのだろう。
「……最近、そうだな。つい二ヶ月程前に『輝水晶の遺跡』という遺跡が、南南西およそ100kmの地点に発見された。この遺跡は、リウォルタワーよりももっと昔……人間界が中界だった頃の遺跡だ。俺は行ったことが無いが、派遣した兵が持ち帰った『記念碑の破片』の文字を解読すると……『獄界への道……封印』と書かれてあったんだ。獄界の道とはこの世界で言う『死者の口』の事だ」
ハルメスさんは、真剣な眼差しで私を見据えた。私の答えは決まっている。
「……少しでも可能性があるのなら、行きましょう。もし……獄界への道を封印出来れば、魔は現れないでしょう」
私はそう言って、フィーネとリバレスに目を合わせる。二人は、迷う事無く頷いた。
「お前ならそう言うと信じてたぜ!俺も行きたいんだがな……結界が消えると、この街は即座に魔の餌食になる。この街の武力を強化しない限り、俺はこの街を離れられないんだ。これを見てくれ」
そう言って、ハルメスさんは私にナイフを渡した。これは!
「オリハルコン!?どこで手に入れたんですか!」
私は驚きの余りそう叫んだ。オリハルコンは天界でしか創れない金属なのに……
「これは、レプリカだぜ。リウォルタワーから取ってきた本物を真似て俺が創ったんだ。これが完成したら、人間でも魔と戦える。もし、フィーネさんを連れて行く気なら持たせてやってくれ」
私は、オリハルコンのナイフを受け取った。そして、フィーネの目を見た。
「私は、ルナさんが行くんなら何処にでもついて行きますよ!絶対守ってくれるって信じてますから!」
そう言って、フィーネはナイフを取った。確かに、フィーネの精神力があれば強い武器になるかもしれない。
その直後の事だった!
「ギャァァ!」
扉の向こう……遠くの方で、断末魔の悲鳴が聞こえた!この声は衛兵の声だ!
「魔なのー!?」
リバレスが、その声を聞いて叫んだ!私とハルメスさんは、瞬時に剣を抜いた!
「いや!魔は結界に阻まれる!まさか!」
扉の向こうで、恐ろしい力が集約されているのを私達は感じた!その瞬間!
「パキィィーン!」
数十本もの氷の刃が扉と壁を切り裂いた!これは……中級神術『天導氷』!