「あっ!ルナさん、掌を開いて上に向けてみてください!」
フィーネがそう言ったので、私は言われた通りにした。すると……粉雪が、舞い落ちてきたのだった。
「雪か……よし、集合場所は『雪の降るミルドの丘』にしよう!」
煌く星と、街灯の灯に照らされた雪はうっすらと輝きながら、ゆっくりと『永遠の時』を告げるかのように空間を埋め尽くした。
「私も同じ事を考えていました!……でも、この冬の内にミルドに帰れたら一緒に丘に行きましょうね!」
それはそうだ。気の早い話だった。今から、死後の集合場所を決めたって仕方ない。
「ああ。フィグリル周辺の魔を倒したら、一旦ミルドに帰ってみよう。二人が出会った丘の村に!」
私はフィーネの手を握った。フィーネもまた、強く私の手を握り返す。
「やっぱりルナさんは凄いです。不安な事も全部取ってくれるから……あと……一つだけお願いしてもいいですか?」
フィーネは嬉しそうに微笑んだ後に、恥ずかしそうに顔を真っ赤にした。
「フィーネのお願いなら、聞かない訳にはいかないな」
そう言いながらも、私まで何だか照れてしまった。
「……あの……一緒に……いたいんです」
フィーネは、小声で囁いた。余程恥ずかしいんだろう。私の耳にも聞こえない。
「……私は、ずっとフィーネと一緒にいるつもりだけど?」
恋に疎かった私には、フィーネが言おうとしている事がわからなかった。天界で教わった勉強は全く役に立たない。
「……朝まで……二人で」
ようやく、フィーネの言いたい事がわかった。彼女にこんな事を言わせた自分を悔やんだ。
戦いが終わるまでなんて……もう待てない。
「……今日は、二人だけで一緒に眠ろう」
私は、恥ずかしくてフィーネの目を直視出来なかったが、フィーネも真冬なのに火照った顔で頷いた。
私達は、雪の降る中……神殿を抜け出して、街の宿まで
走った。笑いながら、手をつないで……
明日の事なんて考えていなかった。今、ここにフィーネ
さえいればいい。大好きなフィーネが……
戦いの事もどうでも良かった。魂が触れ合える、今この
瞬間を大切にしなければならない。
私達は、二度と離れる事が出来ない深い恋に堕ちた……