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「はい、ハルメスさんが、神官によって存在を消されてから1028年と145日……貴方の事は片時も忘れてはいません!」

 私は溢れ出る涙を拭った。そして、ハルメスさんにもらった銀の懐中時計を、胸の内ポケットから取り出す。

「おぉ、まだそれを持っていてくれたのか!ありがとうな。俺は、お前達には知らされずに人間界に飛ばされた。あれから1000年……早いもんだな。お前が成長したように、俺も年を取ったよ……今じゃあ、3647歳になっちまった」

 ハルメスさんは、再会した事で照れくさそうに笑った。

「私……いや、僕も今では1826歳です。貴方が、天界の教えに反発して神官に裁判を起こされた時は泣きましたよ……さらに、僕達は裁判を傍聴する事も出来なかったですから……僕達が兄のように慕っていた貴方の行方は、誰にも知らされなかったんです!」

 私の一人称が……この人の前ではおかしくなる。でも、ハルメスさんが生きていてくれて……再会出来て本当に嬉しい!

「でも、お前がここにいるって事は俺のように堕天したんだろう?俺の考え方を、ルナだけは理解してくれていたからな」

 少し皺の出来た顔でハルメスさんは申し訳無さそうな顔をした。何でもお見通しだな。

「はい、僕は貴方の意思を受け継いで、天界で神官と戦ったんです!それで、天界を変える事が出来たんですよ!」

 この事を一番聞いて欲しかった人に、ようやく今伝える事が出来た……胸が一杯になる!

「……そうか!ようやく……まぁ、積もる話は後でゆっくりするとしよう」

 私はハルメスさんを前にして話したい事が山程あった。しかし、会話に参加する事が出来ないフィーネとリバレスにも気を遣わねば……

「もう一つだけ聞かせて下さい!なぜ……貴方は堕天の刑に服していたんなら、連絡してくれなかったんですか!?堕天の期間は、恐らく満了している事でしょう?」

 私はどうしてもそれを聞きたかった。ハルメスさんは、死んでしまったのかもしれないと心配していたからだ!

「……それについてはすまないと思ってる。俺は、1028年前のあの日……堕天の刑を受けた。期間は500年……でもな、堕天してから100年間、人間界を全て見て回ったよ。その中で、一人の人間の女性に恋をした。その人と過ごした。天使にしては短い年月……それでも幸せだった。そして、人間界が好きになったんだ。俺は、そんな日々の代償に『天使』の指輪を失った。だから、天界には帰れない。いや、帰らないと言った方が正しいな。俺は、これからも人間と共に生涯を全うするつもりだ」

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