この人間界ではどれ程多くの事があった事か……でも、その全ての記憶にはフィーネがいる。丘で倒れてから目覚めた時も……魔と死闘を繰り広げた時も……海で死にかけた時も……そして、一人の女性を愛する事を知った。今まで味わった事の無いような温かい心に包まれた。……それは何と素晴らしい事か。天界は住むのには快適だが、自由を束縛された世界だった。人間界は、生きていくのに多少の苦労を伴うが、全てが自由な世界なんだ。私が求めていたものがこの世界にはある。
必ず、フィーネを幸せにする。
それが、例え天界の教えに背いていたとしても……
私に『生きる本当の意味』を教えてくれたのは君だから……
宝石のシェファで指輪を作ろう、それを私は君の指に通す……
それから一緒に暮らすんだ。戦いを終えた後になるけど。
私は、一人で暗い海を見ていた。すると、雨がパラパラ降り出したので船の中へと戻った。中に戻ると雨の勢いは増して、滝のような勢いになっていた。暗い海と激しい雨……船窓から見えるその光景は、何故か物悲しく思えた。全てを吸い込みそうな闇の海が、空が落とす無数の涙を受け止めているように見えたからだ。心が急に穴が開いたように寂しくなったので、私は急いで部屋に帰る事にした。
「お帰りなさい!」
そこには、いつもの笑顔を湛えたフィーネが待っていた。私の心が瞬時に満たされる。
「フィーネ!」
私はリバレスがいるのにも関わらず、フィーネを抱き締めた。
「どうしたんですか?私はここにいますよ」
フィーネが私の背中を優しく撫でてくれた。私にはもう……君がいないと駄目なんだ。
この晩、リバレスはソファの上で眠り……私とフィーネは同じ
ベッドで眠った。
二人して、寄り添って……どこにも行かないように……髪を撫でながらキスをして眠った。