元の姿に戻ったリバレスが、ニヤニヤ笑いながら私にそう言った。しかし、私はそんな言葉には惑わされない。
「……私が良くても、フィーネに悪いだろ?こういう事は大切にしないと駄目なんだ!」
私は少し顔を赤らめて怒ったような口調でリバレスに返答した。そして、部屋を出ようとすると……
「……ルナさん、私はこの部屋でいいですよ」
驚いた事にドアノブに手をかけていた私へ、林檎よりも顔が赤いフィーネがそんな事を言った。まさか、彼女の口からそんな言葉が出ようとは!?私はしばらく言葉が出なかった。すると、フィーネが更に言葉を続ける。
「私は、ルナさんを信じてますから!」
成る程、そういう事か。私が、フィーネには何もしないという事を信じているんだ。それじゃあ、その期待には応えなければな。
「わかったよ、でも私は床の上で寝るからな」
それが精一杯の、私なりの努力だった。しかし……
「ルナさんが床で眠るんなら、私も床で眠りますよ!ルナさんにだけ辛い思いはさせられませんから!」
フィーネが、驚く程強い口調でそう言ったので私は困った。
「(フィーネは恋人なんだし、一緒に眠りに就く位はいいんじゃないのー?わたしとルナだってよく一緒に眠ってたじゃない。)」
それもそうだ。唯、睡眠を共にするだけじゃないか。私の考えすぎか……
「わかった。今日、明日はこのベッドでいいよ……でも、この次に同じベッドで眠るのは……戦いが終わってからだよ」
私は、内心照れながらもそう言って微笑んだ。すると、フィーネの顔も笑みに染まる。
「はいっ!」
この日は、海を見ながら昼食を食べ、3人でゆっくりしていた。そして、夜になって部屋に運ばれてきた豪華な夕食が終わると、あっという間に時刻は夜の10時位になっていた。すると、フィーネとリバレスが女どうしで話がしたいと言っていたので、私は止む無く一人で甲板に出てきた。空は……昼間の快晴とは違って、厚い雲に覆われていた。何だか少し海が時化ってきた気がする。
「明日で18日目か」
私は一人で呟いた。明日は、堕天してから人間界で過ごす18回目の日なんだ。天界での18日なんて、ほんの一瞬に過ぎないのに……