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 許さない!絶対に許さない!

 

 そして、感情が限界を超えた時、俺の体に変化が顕れた!

 体がとてつもなく熱い!焼けそうだ!そう感じた時には体中が強力な『力』に包まれていた!

 頭髪は銀色に変色し、瞳は真紅に染まっている!

 先刻、神官にかけられた『拘束』の神術も紙切れのように弾け飛び、次の瞬間には、苦しむリバレスに手をかざし、術から解放していた!

 

「な、な、な……何ですかそれは!?」

 長い沈黙の後、其処で神官がようやく口を開いた。そう感じたのは、今の俺には全ての動きが止まっているかの如く見えるからだ。

「……何ですかだと!?ふざけるな!貴様がかけた術で、俺達の口を封じたのだろう!?それを破っただけだ!……何が神官だ、何が神だ!保身と欲の為に生きる偽善者が!」

 俺は怒りの余り、普段決して使わない暴言まで吐いた。

「天使ルナリート!せっかく助けてやったのに何だ、その態度は!?近衛兵、取り押さえなさい!」

 近衛兵は全員槍を持ち俺の元へ走り寄る。

「邪魔するな!」

 俺は、右の掌から『焦熱』の神術を放った!

 それは近衛兵の白い甲冑を真っ赤に加熱させ、全員裁判所の壁に叩き付けた!叩き付けられた壁は崩壊し、崩壊した壁から兵が外へ飛び出す!

 本来、この術は学校で教わる最も初歩の術で、マッチ一本程度の火力しかない。今、俺の体は通常の数百倍以上の力が漲っているようだ。

 

「俺達は……貴様みたいな神官が造った、偽物の『神』の教えに操られる、生きる意志を持たない人形なんかじゃないんだ!生きる者はな、自由に考え自由に発言し、自由に生きる権利があるんだ!」

 俺は神官を激しい憎悪と共に睨み、言葉を続ける!

「……それを貴様は踏み躙る!気に入らない奴は、すぐに惨たらしく処刑する!そして俺のように、成績が優秀な者は助けて利用する!貴様が本当の罪人だ!」

 

 俺は今まで言えなかった本心を神官にぶつけた。聴衆の天使は皆、俺の意見に聞き入っている!皆が少なからず同じ疑問を抱いていたのだろう。この後はどうなろうと、俺は満足だ……

「天使ルナリート!救いようのない男だ……これでも食らいなさい!」

 ハーツは高等神術である『滅炎』を俺に向けて放った!それは半径5m程の炎の渦で、とてつもない熱量だ!しかし、俺はそれを片手で完全に掻き消した!

 その熱は辺りの物を溶かし、普通の天使ならば側に寄れない程の熱空間を生じた。

 尋常ならざる光景を見て、聴衆の天使達は急いで逃げ出す!

 

 そして……この場には俺とリバレス、セルファス、ジュディア……そして神官だけが残された。臆病な保身主義者のノレッジは真っ先に逃げ出していた。

 

「貴様の所為で、何人の天使が犠牲になったと思ってる!?この1000年間、俺と同じような考えを持った天使が!?皆、この世界を変えたかったんだ!自由に……何者にも脅える事無く、幸せに生きる術を模索したんだよ!」

 俺は自由を求めて処刑された、今は亡き天使達の意見を代弁した!

「黙れ、黙れ、黙れ!この神官ハーツ様に逆らうな!逆らう奴は死ぬがいい!」

 そう叫び、ハーツは杖を振り上げた!『魂砕断』だ!

 光の刃が俺を襲う!その術を眼前にして感じたが、確かにこれだけの力なら魂が砕けてもおかしくはない!

 しかし、その瞬間俺は全身の力を最大限まで増幅させた!

「パリーン!」

 究極処刑神術の『魂砕断』は、激しい音を立て俺の体に触れる前に粉々に砕け散った!

「そんな馬鹿な」

 ハーツは杖を落とし、ガックリと膝をついた。

「神官ハーツ!今までの無念の天使達の怨みを思い知るがいい!」

 俺はハーツとの距離を一瞬で詰め、拳に怒りを込めて狂気の神官を殴り飛ばした!

「うがぁぁ!」

 神官の叫びと共に、ミシミシと骨が砕ける音がした!そのまま奴は『神を象る彫像』に激突し床に落ちる。

 俺はゆっくりと奴に近付いた。

「来るなぁぁ!許してくれぇぇぇぇ!」

 奴は懸命に命乞いをしている。

「貴様は……今まで命乞いをした天使をどうしてきた!?」

 俺は未だ収まらぬ激しい怒りを神官に向けた。

「……許して下さい!どうか、どうか命だけは!」

 惨めな姿だ。あれ程厳格に……否、傲慢に天使に情けをかけなかった神官が、こうして跪き許しを請うている。

 しかし、俺は冷徹に言い放った。

 

「二度と転生出来ぬよう、肉体もろとも魂を消し去ってやる!貴様にはその刑がよく似合う!」

 

「ルナ!」

 その時初めて、リバレスとジュディア、セルファスが叫んでいるのに気付いた。

「止めるな!この男がいなければ天界は救われる!」

 しかし、3人は俺の元に駆け寄り必死で止めようとする!

「ルナ!それで神官を殺しても、神官とやっている事は変わらないわよー!」

 俺が奴と変わらないだと!?そんな筈はない!

 3人は必死で俺に食い付いてきたが、今の俺を止める術は無かった。

「神官ハーツ!覚悟するがいい!」

 神官は放心状態に陥っていたが、そんな事は関係無い。俺は、許されざる者を消滅させる為に、空中に強力な『滅び』の力を集めた!

 何故か、今の俺には全ての神術の術式が頭に浮かぶ。究極神術を超えた禁断の神術さえも!

『滅び』の力はやがて空間さえも飲み込み始めた。これを放てば神官は愚か、この神殿そのものが消滅するだろう!

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