私は、興奮を抑える為に深呼吸をした。皆はどんな反応を示すだろうか?絶縁で済むだろうか……
「ルナ!目を覚ましなさいよ!あなたはどんな天使よりも優秀で、容姿も頭脳も最高な天使ルナリートでしょう!?唯一、私が一人だけ認めた存在の筈……。それをあなたは裏切るの!?」
私の考えの一片も理解出来ず、そう答えたのはジュディアだった。
「私はジュディアが思っている程、素晴らしい天使じゃないさ。偶然、能力が良く生まれて来ただけだし、そんな自分に孤独さえも感じてる。ジュディアには解って貰えないようならそれでいい」
私は冷静にジュディアの目を直視して、多少冷たくそう言い聞かせた。
「俺もそう思うぜ……。お前程優秀な奴が、そんな馬鹿な事を言って一生を無駄に散らせるなんて許せねぇよ!友人として絶対そうさせる訳にはいかない!お前は俺の目標だし皆にも必要なんだ!俺はそんなことになる前に力ずくで止めるからな!」
彼は激しく私を叱責した。私を思い遣っての事だろうが、私の考えは変わらない。
「セルファス……気持ちは嬉しいんだが、友人なら解ってくれると思ってた分……残念だよ」
悲しい事に、親友だと思える彼にも理解して貰えない。私に共鳴してくれる友人はいないのだ。
「リバレス!お前も何とか言ってやれよ!」
話を振られたリバレスは戸惑いながら……それでもしっかりと答えた。
「わたしは、ルナが大事な親みたいなものだからルナの考えは尊重する。でも、絶対死なせたくない!今日はもう遅いし、わたしが部屋で説得してみるから、みんなはもう帰って」
「でも!」
二人は同時に答えた。しかし、リバレスは態度を変えなかった。
「お願い!わたしは、生まれた時からルナに育てられてきたから、何となく考えは解るのー!絶対みんなの思うような悪い方向にはしないからー!今日は……ね?」
そう言って二人は渋々と部屋に帰って行った。
「……絶対に!私の信じるルナに馬鹿なことはさせないから!」
ジュディアが帰り際に放ったその言葉が、何故かいつまでも耳に残った。
そして私達も部屋に戻り、リバレスと二人になった。
「……リバレスありがとう。お前だけだ、私を解ってくれるのは」
彼女は少し困惑しながら答える。
「もうー!普段はわたしのことなんか、滅多に褒めないくせにー!ルナがそんな考えを持ってるのは解ったけど、それが神官に知れたら死刑じゃ済まされないのよー!だから、ルナが将来神官になって、現状を改革する日が来るまでは他言しないって約束できる!?」
こうなると、まるでリバレスが私の親みたいだな。
「それが一番堅実だろうな。解ったよ、もう無茶はしない。ゆっくりと天界を変えていくさ」
私は、一朝一夕で変えられない現実を直視し、これから先生涯をかけての責務を胸に誓ったのだった。
そう、この時は本気でそう思っていた。