〜希望の目覚め〜 僕は……一体どうなったんだ?生きているのか?体に感覚がない。少し怖いけど、目を開けてみようか…… 「ノレッジ!」 この声は……この姿は……ルナリート君?あれ、セルファス君……それにジュディアさんまで?一体? 「あれ……僕は?」 「ノレッジ様!うわぁぁー……ん!」 今僕の胸元に泣きついてきているのは……レンダー!?良かった。何とか助かったんだ!僕も生きている! 「馬鹿野郎!」 痛い!喜びで思わず笑みを零していると、セルファス君に頭を軽く殴られた。何故だ? 「無茶な事をしやがって!昔のお前は……決して危ない事には手を出さなかった。なのに今回は何だ!?お前はもう少しで死ぬ所だったんだぜ!ルナが来るのがもう少し遅ければな!自分が死んだら意味がないだろ!?」 セルファス君は目に涙を浮かべている。そうか……僕は結局ルナリート君に助けられたのか…… 「私はお前を少し助けただけさ。彼女を救ったのはノレッジ、全部お前の力だ。見直したよ!まさか、禁断神術まで使うとはな」 「……はは……ありがとうございます。どうしても彼女だけは僕の力で助けたかったんですよ」 「ノレッジ様!もうそんな無理な事はやめて下さい!」 あぁ、そうかすぐ傍に彼女がいたんだ。……恥ずかしいな。顔が真っ赤になるのを感じた。 「ノレッジ、あなたが倒れてからもう1週間が経ったわ。その間、レンダーはずっと心配し続けていたのよ。片時も傍を離れずにね。二人とも……これからは辛かった分、仲良くしないと駄目よ」 ジュディアが笑った。天界にいた時は殆ど笑顔を見る事なんて無かったのに。そうだ、レンダーも僕も助かった。本当に良かった! 数日後…… 「ノレッジ様」 僕とレンダーは、リウォルの街の近くにある砂浜に来ていた。レンダーの病気は完治し、外を自由に歩く事が出来るようになった。 「『様』はやめてくれって言ったでしょう?ノレッジでいいよ」 「じゃあ、ノレッジさん!」 「はは、まぁそれでいいか。慣れないと思いますしね」 「あ!ノレッジさんも敬語が抜けきってない!」 「あ、ごめん。僕は、基本的に誰と話す時も敬語を使うからなかなか慣れなくて」 「お互いに慣れていかないとダメですね」 「そうですね」 「あははは!」 僕と彼女はこんな感じで、手を繋ぎながら浜辺を散歩している。何だろう?こんな幸せな気持ちになったのは生まれて初めてだ。 「ノレッジさん、私、幸せです。あの時、本当に死ぬと思っていたのに」 突然彼女は砂浜に座り、恥ずかしそうに海を見つめながらそう言った。今は夕方……夕陽が海に射して、辺りが真っ赤に染まっている。 「僕もとても幸せですよ。いや、幸せだよ。僕もずっと、君の事が好きだったから……今生きていてくれて……元気になってくれて心の底から嬉しく思う」 「ノレッジさん!私も貴方の事が大好きだから……ずっと傍にいて欲しい!」 レンダーは顔を炎のように赤くしながら……そして目を潤ませながらそう言った。僕は、そんな彼女を愛しく思い抱き締める。きっと、こうやって抱き締めるっていう事は誰かに教わる事じゃなくて本能的なものなんだと思う。 「僕はずっと傍にいるよ。あの時命を懸けたように、これからも君を守り続ける。ね?」 「ノレッジさん、私も永遠に」 こうして……僕達は、長い長いキスを交わした。そして、未来を……永遠を誓った。二人とも死を乗り越える事が出来た。これから先、どんな事があっても僕達を切り裂くものはないだろう。例え、ルナリート君がかつて経験したように魂の離別があったとしても……僕達も大丈夫だ。こんなにもお互いを想う事が出来る。 これが『永遠の心』だったんだ。 人を愛し、愛される。 永遠に同じように想い続ける事ができる。 何があっても、どんなに離れていても変わらない。 ようやくわかったよ。 これが、僕の今まで生きてきた意味なんだ。 | |
目次 | 第四節 |