§エピローグ§ 心……それは、自分を強くするもの……そして時に脆くもある。人は、一人では孤独なもの……だから心を持ち、誰かと寄り添うのかもしれない。『永遠の心』、それを持つ事が出来た私は幸せだ。リバレス、兄さん、父さんと『心』が離れてから2年の歳月が流れた。 天界は人間界と同化し、天使達も力を失いつつある。現在、人間界は兄さんに代わって私が治めている。 「皇帝、ミルドを治めているセルファス様とジュディア様がお見えになっていますが、いかかいたしましょう?」 私はフィグリルで皇帝となった。セルファス達には各地の街を守ってもらっている。今、私に意見を求めているのは一人の人間の兵だ。 「ああ、通してくれ」 私がそう言うと、兵は走って行き二人を迎え入れた。 「ルナ!久し振りだな。お前達の結婚式以来だよ!」 嬉しそうに私に走り寄るのはセルファスとジュディア。 「おめでとう!でも、シェルフィアの姿が見えないみたいだけど?」 ジュディアが不思議そうに周りを見渡す。そう、この場所にはシェルフィアはいないのだ。 「そろそろ……だから、今はゆっくり休んでもらってるんだ」 私は少し照れて頭を掻いた。シェルフィアには、無理に動いてもらうわけにはいかない。 「ルナリート君!おめでとうございます!」 そこで、リウォルを治めているノレッジが飛び込んできた。 「まだ早いよノレッジ!皆も、今日はこの城でゆっくりしていってくれ」 私が顔を真っ赤に染めてそう言うと、3人は可笑しそうに笑いながら兵によって最高級の部屋に案内されていった。 「さてと……シェルフィアの所に行かないとな」 私は王座を離れ、私とシェルフィアの寝室へと急いだ。 「ルナさん、心配かけてごめんね」 シェルフィアが半分涙目になりながら私の手を握る。この2年で、彼女はもう敬語を使う事は無くなったが『ルナさん』だけは直らない。 「いいんだよ。シェルフィアはゆっくりしていればいいんだから」 私はそう言って、そっとキスをした。すると、彼女は嬉しそうに微笑む。 「うん……でも、今日はずっとここにいて欲しいの」 シェルフィアはまだ不安なんだ。今日は、世界の事は忘れてシェルフィアの傍にいてあげよう…… 「わかったよ……だから、安心するんだよ」 彼女の髪を撫でる。それでホッとしたのか、シェルフィアは穏やかな表情と共に寝息を立て始めた。 私は風になびくカーテンを開け、仄かな月明かりの下でシェルフィアの手を離さなかった。 「……ルナさん、うっ!」 突然……シェルフィアが苦しそうになる! 「シェルフィア!大丈夫だ……頑張れ!」 ギュッと手を握り締める!今私が出来る事はそれぐらいだ!その後……数名の女性が部屋に入ってきた! 「皇帝!少し離れていてください!」 女性が叫ぶので私は離れているしか無かった。そして、気が遠くなるような時間が過ぎていく…… やがて夜が明けた時、待ち焦がれていた瞬間が訪れる。 「おぎゃぁ!おぎゃぁ!」 私とシェルフィアに待望の子供が生まれたのだ!長い歴史の中で……エファロードと人間との間に生まれた最初の子だった。 「シェルフィア!よく頑張ったな……ありがとう!」 私は思わず涙をこぼした。だが、シェルフィアは喜びに満ち溢れた最高の笑顔で私に話しかける。 「永遠の心が形になって現れたの……大切な大切な宝物。ずっと一緒に育てていこうね!」 そんなシェルフィアが愛しくて、私は涙が止まらなかった。そんな中で、助産婦の女性が私達の子供に柔らかい布を着せて、シェルフィアに抱かせた。シェルフィアは微笑みを絶やさずに、我が子を優しく擦っていた。 「私にも触らせてくれよ!」 そう言って、私は自分の子に触れた。とても、不思議な気持ちだった。自分が親になるなんて……そして、今にも溶けそうな程柔らかかった。女の子だ……私はずっと男の子が生まれるものだと思っていたが、予想に反して我が子は可愛らしい女の子だったのだ。 「リルフィ」 シェルフィアがそう囁く。一体? 「この子の名前よ……ずっと考えていたの」 彼女は私の方を見てニッコリ微笑んだ。生まれる前から名前を考えていたんだ。私には内緒で。少し驚いたが、嬉しい。 「いい名前だな。でも、その名前は何処から来たんだ?」 私にはそれだけが気になった。 「それは、自分で考えてください!」 意味深な態度……彼女は少しふくれていた。だが、答は簡単だ……その答を私はシェルフィアの耳に囁く。 「……当たりー!やっぱりルナさんっ……大好き!」 シェルフィアが私の頬にキスをする。周りに大勢の人がいるというのに!朝だというのに私の顔は夕陽よりも赤く染まった! 「おめでとう!」 そんな様子を誰もが祝福してくれた。もう『悲劇』は終わった。後は幸せに生きていくだけだ。 『永遠』と共に…… | |
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