「ルナー!危ない!」

 私が先頭で『間』に入った瞬間、リバレスが叫んだ!私は咄嗟に体を光膜で覆う!

「ガキィィ……ン!」

 神術で出来た巨大な槍が光膜に直撃する!だが、槍は力負けし消え去った!

 

「くくく……ついにこの日が来ましたねぇ!私の人生を砕いた愚者に対し、破滅をもたらす時がぁぁ!」

 

 この男!私はよく知っている。かつて、天界を誤った方向に導いていた神官……ハーツ!

「元神官ハーツ……私はお前に用は無い。ここを通してくれないか?」

 今の私の力は天界でハーツと戦った時とは比べ物にならない。この神官と戦っても勝負は見えている。私は早く神の下へ行かなければならないのだ!

「私は神官ハーツ様だぁぁ!逆らう者は魂を砕かれるがいぃぃ!」

 彼に私の話は聞こえていない。どうやら、精神の一部が破綻しているようだ……哀れな天使……

「リバレス!シェルフィア!奴の神術は強力だ!だが、油断せずに、『拘束』と『魂砕断』さえ気をつければ大丈夫だ!」

 私の叫びと共に、私達3人はハーツを取り囲むように三角形を作る!

「全て消えるがいぃぃ!」

 ハーツが絶叫する!その瞬間にハーツの体から光と熱が放射された!だが私達は、神術や氷でそれを防ぐ!

「小癪な……魂を砕かれてしまいなさいぃぃ!」

 ハーツが光と熱を発した直後、更に追い討ちをかけるように『魂砕断』を同時に複数発動させる!

「昔より力と殺意に満ちているな……動きを止めてやる!」

 私は、魂砕断を防ぎながら奴に向かって『不動』を発動させた!捕らえれば奴はもう動けない!だが!

「甘いですねぇぇぇ!動きを止めるならこうしないと!」

 ハーツは不動を軽く避けた後に、リバレスに向かって『拘束』の神術を数百発動させた!『拘束』は『不動』より力は弱いが……数百の『拘束』は避けきれない!

「リバレス!」

「リバレスさんっ!」

 私とシェルフィアが同時にリバレスを助けようとする!

「あんまりわたしを……甘くみないでよねっ!私の最大神術……『重圧環』!」

 重圧環!?それは究極神術に属する神術……破壊力は無いが……この環の中にあるもの全てに十倍もの重力が加算されるのだ!

「ぐぅぅぅっ!体が重いぃぃ!」

 ハーツの動きは緩慢になり……『拘束』の神術まで重力に負け消失する!

「シェルフィア!今よ!」

 リバレスが大声で叫ぶ!リバレスとシェルフィアは、70日間のトレーニングの中で多く連携攻撃を覚えていた!

「わかりました!行きますよ!」

 二人が何をするのかはわからない。だが私は、いつでも動ける準備だけはしておく!

「究極神術『不動』!」

 シェルフィアが叫んだ!そうか、重圧で動きを鈍らせて『不動』で動きを止めるのか!

「うがぁぁ!」

 ハーツはその場で固まって倒れる!今が好機!

「ルナー!後はお願い!」

 リバレスが『重圧環』を解除し、動けないハーツを指差した!

「しばらく眠っているんだな!」

 私はそう言って、ハーツを雷の渦に飲み込ませた!

「私は、神官ハーツ様だぁぁ!」

 とっくに意識を失ってもいいはずなのに、ハーツは叫び続ける!

「ハーツ!負けを認めるんだ!そうでなければ死ぬぞ!私はお前を殺したくない!」

 私は電撃を続けながらハーツに叫ぶ!もう聞こえていないかもしれないが……

「私は、誰にも負けはしなぁぁいぃぃ!」

「カッ!」

「ドォォ……ン!」

 一瞬の出来事だった。一体何が起こった!?目の眩む閃光と爆音!

「キャァァ!」

 シェルフィアとリバレスの叫び!

「ぐっ!」

 私はこの時に初めて気付いた。自分が血塗れになっている事に!

 ハーツは……自分の命と引き換えに……禁断神術『爆』を使ったのだ!

 私の傷はそんなに深くない。全身を軽く火傷した程度だ。だが!

「……シェルフィア!リバレス!」

 二人は倒れていた!火傷ではなく、爆風の衝撃で壁に叩きつけられたようだ……私はすぐさま治癒を行う!

「……ハーツ……最後まで救えない奴だったな」

 私は、ハーツの杖の破片を見てそう呟いた。それから、1時間ばかり二人の治癒に力を注いだ!

 二人とも気を失い、骨折もひどい……どうしても完全回復させるにはそれぐらいの時間が必要だった。

 

 そうして、二人の治療が終わった時……私の体を強い疲労が襲い、私は眠りへと落ちていった。

 

 

 この先に待ちうけるのは……何だろう?
平和だろうか……戦争だろうか?

 

 唯一つ確かなのは……私が次に出会うのは
『神』であり……私と兄さんの『父』なのだ。

 

 そこで……全てが始まり……全てが終わる。

 

 例え、この先に待つ運命が過酷だったとしても私は
立ち向かう……『永遠の心』を持って……

 

 全ては……未来の為に……

 

 君と創る未来の為に……

 

 そして……今を懸命に生きている者の為に……

 

 

目次 第九節