今晩は……いい夜だった。雪の降る中……フィーネと愛を交わしたテラスで料理を食べ、美味い酒を飲んだ。無論、寒いので私達の周り数mを『結界』と『焦熱』で覆うのは忘れない。その中で、今までの話……これからの話が大いに花咲いた。一番印象的だったのは……兄さんの恋人ティファニィさんの魂は、兄さんと同化したって事だった。確かに、それならずっと一緒にいられる。転生して記憶を失う事もない。でも、私はフィーネと約束したんだ。再会する。再会してもう一度愛し合う。魂の同化……それは、心が離れる事が無くなる代わりに1対1で愛し合う事は出来ない。心や考えを全て共有する事になるからだ。

 私は、エファロードの記憶を完全では無いが継承した。だから、魂についてそんな事がわかるんだ。

 私が200年間、フィーネの魂が転生するまでどうするか?それは、一つの選択肢しかない事も理解している。

 

 しばらくはこんな夜を過ごす事は出来ないということ……

 

 薄明かりの中でひらひらと雪が舞い降り、大地や街を白に染める。

 きっと今頃は『ミルドの丘』も純白に覆われている事だろう。

 フィーネと約束した丘……私達が初めて会った場所。
旅の始まりはそこからだった。

 私は、掌を開く……この場所でフィーネに言われた通りに……
すると、掌には真新しい結晶が積もってゆく。

 あの時のフィーネはもういない。私は、フィーネを助け
出すまでは泣かないと誓った。

 フィーネの魂は救うことが出来た。でも、あの時のフィーネはもう戻らない。

 私の頬を一筋の涙が伝った。これは思い出への涙……

 兄さんとリバレスが眠りについた後も、私はずっと雪の世界を眺めていた。

 

「寂しいよ……フィーネ」

 

 私は雪に向かって呟いた。すると、雪が降っているにも関わらず雲の間から月が顔を出した。

 まるで私の声に反応するかのように……悲しみを訴えかけてくるような月明かりが私を照らしていた。

 

 

 

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