【第三節 闇の血筋】 「ガシャン……ガシャン」 俺の意識が戻ったのは、そんな無機質な音が耳に響いてきたからだ。 「ここは?」 俺が思わず呟く。すると、そんな俺の様子を察知した魔が走り寄ってきた。 「ガハハハハハ!無様だな、ルナリートよ!エファロードでありながら、貴様は拷問の末に処刑される運命だ!」 ここは……牢獄か。壁も床も黒一色……無機質な音の正体は、牢の番兵が鉄格子を叩く音だったようだな。 「(リバレス、いるか?)」 気配のしないリバレスに俺は意識を転送する。指輪に変化していたはずだが…… 「(無事よー……今は、ルナの内ポケットに隠れてるわー!)」 良かった、無事だったか。それにしても、あんな所で力尽きるなんて不覚だ……剣や荷物も取り上げられたようだ。 「(無事で良かった。それはそうと、ここは何処であれからどれぐらい経ったんだ?)」 意識を失ってからの事は何もわからない。俺は状況を把握するためにリバレスに問いかけた。 「(ルナが空から堕ちて、6時間ぐらい経ったわー。ここは、獄王の宮殿の地下牢よ。沢山の魔に囲まれてルナは殺されかけたんだけど、獄王の声が響いて、ルナはここまで運ばれてきたのー……それよりも、今のルナの髪は銀色だけど赤い目じゃないし、翼も無い)」 リバレスが不安気に囁いた。確かに、今の俺の力はさっきまでに比べて激減している。さっきまでが、第3段階だったのに今は第1段階の力に戻ったからだろう。もうすぐ、獄王に会うかもしれないのにこのままではまずいな…… 「エファロード!俺を無視するとはいい度胸だ!」 そんな事を考えていると、牢の番兵が俺に罵声を浴びせてきた。こんな奴はどうでもいいが…… 「バキバキバキッ!」 俺は、とりあえず鉄格子の3本を軽くへし折って牢の外に出る。この程度の強度しかない牢ならば、紙箱の脆さに等しい。 「誰が、拷問の末に処刑されるんだ?」 立ち竦む番兵を睨みつけて俺は問いかける。すると、番兵は必死の形相で逃げ出した! 「貴様は……獄王様に殺されるんだぁぁ!」 俺は、番兵が逃げていった階段をゆっくりと歩いていった。恐らく、獄王に会うのは力づくでしかないだろう。 剣も無く力も少ない今の俺でどこまでやれるかどうか心配だが、もうすぐフィーネに辿り付けるはずだ! 俺は、上に通じる扉をゆっくりと開いた。すると…… 「よく来たな……ルナリート・ジ・エファロードよ…… 我は、この宮殿の屋上にいる。申したい事があるのならば、 お前が正しいというのならば……力で示してみるがいい」 荘厳な声が響いた。重く……力を感じる声……俺はその声が獄王本人であることを確信した。 声だけで感じる力……それは、神にも引けをとらない。恐ろしい力だ…… 「……わかりました。俺は、必ずあなたの元に辿りついてみせましょう!」 神にも等しき、獄界の王……俺の口からは自然と敬意の言葉が出てきた。 このフロアは……一辺が100mはある大広間。上に続く階段は見当たらない。唯、奥に扉が一つだけ見えた。 | |
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