§第二章 人間界§ 【第一節 運命の始まり】 私が、天界からの転送で意識を失ってから何時間経っただろうか?私はうっすらと目を開けてみた。すると…… 「おい!リバレス!起きろ!」 私は半狂乱になりながらリバレスに叫んだ! 「んー?なぁーにー?……キャァァー!」 リバレスも驚いたようだ!それも無理はない。私達は本当に空の上から、まだ遠く見えない地面めがけて猛スピードで落ちている! まるで私達は流星の如く夜空を垂直に切っているのだ! 「……大丈夫だ!翼を開けば!」 私は翼を広げようと力を込めた。しかし! 「ルナー!翼が無くなってるわよー!」 私は落ちていく体で必死に腕を背中に伸ばしてみた!だが、本当に翼は無くなっていた!堕天は翼も失うのか!? 「……まずいな」 私は血の気が引いていくのを確かに感じた! 「ルナー!わたしが全力で支えてみるから!」 リバレスは小さい体で翼を懸命に広げ、私を下から支え落下を食い止めようとした! 「……リバレス!やめろ!無茶だ!」 無謀な行動だった。天翼獣といえども、身長が30cm程しかない彼女に私の落下を食い止める程の力は無い! 「ルナ!神術は使えないのー!?」 私のあらゆる力は90%封じられている!しかし、今はそんなことも言っていられない!何もしなければ確実に死ぬ! 「リバレス!お前も力を貸してくれ!」 「わかったー!」 私は頭の中で『保護』の術式を描いた!そこに今ある精神力を全て注ぎ込んだ! 「行くぞ!」 私達の周りを『保護』のオーラが包む!しかし、そのオーラは力を封じられる前に比べると遥かに弱々しい! 「地面が見えてきたわよー!」 大地が見えた!夜の暗い大地が!私達はその瞬間激しい嵐に揺さぶられた!激しい雨と風に加えて、落下するエネルギーで『保護』のオーラ膜にダメージを与える!……地面が近い! 「……ぶつかる!」 そう思った瞬間だった! 「ピカッッ!」 雷光がはっきりと見えた!次の瞬間…… 「ドォォーン!」 激し過ぎる衝撃が私達の体を襲う!その衝撃は私を 私は恐ろしさの余り、目を閉じるしかなかった。 「(死んだかもな)」 目を閉じてどれぐらい時が経ったかもわからない。ただ……辺りが急に静かになった気がした。 「……ナ……ルナ!」 聞き覚えのある声が私の耳に届いた。私は恐る恐る目を開けた…… 「……ルナ!」 目に涙を溜めたリバレスが私の胸に飛び込んできた。 「……ッ!」 その瞬間耐え難い痛みが全身に宿った!先ほどの落下で体は重症だ…… 「……ルナ!大丈夫なのー!?」 なおも、彼女は私に叫びつづけた。私に比べ彼女は見たところ無傷のようだ…… 「……クッ……体中が……ひどく痛む。力が封じられて……体まで脆くなっているみたいだな。堕天を甘く見過ぎていたようだ」 私は心配かけさせまいと作り笑いをしたが、体はしばらく動かせそうにも無い。 「……そりゃー天使の時のままじゃあ、刑罰にならないもんね」 その言葉の直後再び激痛が私を襲った! 「……ウッ!……冗談を言ってる場合じゃ……なさそうだ……どこか……休める場所を」 私は無理矢理にでも動こうとした。 「ルナ!無理しちゃだめよー!わたしがルナに『治癒』の神術をかけてあげたいけど、今はそれ程の力は残ってないのー……だから……お願い、ルナ!しっかりしてー!」 彼女は私の体を激しく揺さぶる。 「……リバレス、痛いから!……でもな……体に全く力が……入らないんだ」 私はその言葉を発した直後目の前が真っ暗になった。 「……ちょっとー!ルナ!どうしたのよー!」 リバレスの声が遠ざかっていく…… 「……仕方がないわー。絶対にイヤだったけど『人間』に助けを求めるしか!」 彼女のその言葉と、彼女が発した人間に合図する為に送った光の柱……それが、その時の記憶の最後だった。 | |
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