第二十三節 閃光

 

 ルナとフィーネは、港沿いのレストランに入った。内装も外装も赤煉瓦で、店内には硝子製のランプが吊るされている。ランプの明かりは、店内を暖色に染める。

 時刻は午後七時半。二人は向かい合わせの席に座り、コース料理を頼んだ。オードブルとポタージュスープは既に食べ終え、眼前の凝った魚料理を食べ始める所だ。

「わぁ、美味しそうですね!」

「本当だな。それより、今日は楽しかったよ。ありがとう、フィーネ」

 そう、生まれてから今までの中で一番。楽しくて幸せだった。

「こちらこそ、ありがとうございます! 私、今日の事は絶対忘れません。大切な大切な思い出です」

 彼女は、胸元のリボンを「キュッ」と掴む。顔は仄かに赤い。

「私も忘れたりしない、ずっと。さぁ、料理はまだまだある。食べよう」

 フィーネがニッコリ頷く。やはり彼女は笑っている顔が一番可愛らしい。

「あ、これ美味しい……」

「確かに美味いな。まぁ、フィーネの料理には及ばないけどな」

 私は、どんな料理よりも、フィーネが心を込めて作ってくれた料理の方が好きだ。

「えぇっ! 私の料理如きじゃ、此処の料理には及ばないですよぉ」

 思いっ切り首を振る彼女。私は正直に言っただけなんだが。

 

 料理を食べ進めてデザートが出て来た頃、私は「ある話」をふと思い出した。今日、露店の男から聞いた話だ。「リウォルの街の北東三十kmには『リウォルタワー』と言う古代の塔があり、其処には魔物が(たむろ)している」らしい。

 だが、何故今それを思い出したのだ? この店は南向きに立っていて、私は北向きに座っている。そうだ、右前方に「違和感」を感じたのだ。右前方は北東。「チリチリ」と身が焼かれるような感覚が襲って来る。




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