「ここから、どれぐらいなんだ?」
私は、パンを片手にフィーネに訊いた。
「大体東に300kmぐらいなので、明日の朝には着きますよ」
と、フィーネは事も無げに紅茶を片手に答えた。
「(長いわねー!)」
と、リバレスは私の言葉を代弁した。
「この世界の交通は不便だな。それはそうと、その街には何があるんだ?」
と私も紅茶をすすりながら訊いた。コーヒーは飲めないが紅茶は飲める。
「通称、雨の街レニー。作物を多く作り、貿易をしている街です。ミルドから、一番近いっていうのもありますが、何より最近悪い噂を聞いたんです。それは、悪い疫病が流行っているという噂……その背後には魔物が関わっているという噂も……だから、その原因が魔物ならルナさんに何とかしてもらいたいと思ったんです。私も頑張りますから!」
と、フィーネは頭を下げて私の手を握った。これが、彼女のお願いの仕方なんだろう。
「私は、それが魔……いや魔物の仕業なら何とか出来るかもしれないが、純粋な疫病ならば何も出来ないぞ」
と私は、余り大きな期待を持たせないように言葉を返した。
「はいっ!お願いします!」
それでも、フィーネは嬉しそうだった。
その後もフィーネは私達の事をもっと知りたそうだったが、約束をしていたので何も訊いてはこなかった。
船での時間はこうしてゆっくりと流れていくのだった。