その通りだ。此処は永遠が始まった場所だ。シェルフィアは……フィーネは強い心の持ち主だ。それに何度助けられた事か。
「私がフィーネだった時の最後の言葉、『おやすみなさい、ルナさん大好き』。今はそれを毎日言える。そして、朝目覚めたらルナさんがおはようって言ってくれる。何も怖く無いわ」
仄かな輝水晶に照らされたシェルフィアの表情は温かい。悲しみも怖れも、彼女が傍にいてくれるだけで消えていく。
「ありがとう。シェルフィア、フィーネ、兄さん」
私は心から感謝の言葉を送った。そして、私は祭壇の一部を削り取り持参した袋に詰めた。後はこれを持ち帰るだけだ。
「ルナさん、寄りたい場所があるの」
「何処だい?」
私が訊くと、彼女は難しそうな顔をして答えた。
「フィーネのお墓よ」
「解った」
過去の自分の墓だ。不思議な感覚がするのは無理も無い。
島の西にある断崖。その上に、白い大理石で出来たフィーネの墓標はある。『永遠岬』、人々にはそう呼ばれている。
輝水晶の遺跡は立ち入り禁止だが、フィーネの墓標は人々に大切に保護されており、墓標には多くの花が捧げられていた。それだけでなく、周りをとり囲むように一面の花畑が広がっている。
この場所は聖地とされているが、私達が訪れた事は一度も無かった。
「此処に、フィーネの肉体が眠っているのね」
潤んだ目で私を見つめる。しゃがむシェルフィアの頭を優しく撫でて、私も腰を落とした。
「そうだよ。墓を造ったのはリバレスだ」
私がそう言うと、シェルフィアは驚いた表情を見せた。
「リバレスさんが!?」
「ああ、私は悲しみの余りフィーネを冷たい土の中に眠らせる事が出来なかったんだ」
その言葉を聞いて、シェルフィアは手を合わせた。リバレスを想ってだろう。私も彼女を想った。
彼女は今どうしてるだろう?望み通り人間に生まれ変わったら、真っ先に見つけてやらないとな。でも、あいつはいつも目覚めるのが遅かったから、転生するのはまだ先のような気がする。
私達は祈りを捧げた。
フィーネ、リバレス、兄さん、そして父さんに……
その後、私達は誓いの言葉を立てる。
「私達は永遠の心を信じ……私達を愛してくれた、貴方達のお陰で此処にいます」
「此処にいるという奇蹟を決して忘れません。そして、愛するリルフィ、人間を守る事を誓います」
210年前と同じように岬は夕陽に包まれたが、あの時のような悲しみは一片も無い。
私達は強く手を握り合った。決して離れない魂を確かめるように。