「私は、酔っても……嘘はつかないんです!あれ?目の前が」
その言葉の直後、彼女は前のめりに倒れかけたが私が受け止めた。
「はー……ヤレヤレねー。これだから人間は」
リバレスが溜息を漏らした。その気持ちはよくわかる。
「まぁ、仕方ないだろう。それでも、私が思っていた人間像よりは遥かに上出来だ」
私は、今の率直な意見を話した。
「ルナはなんでも、公平に見ようとするもんねー。でも、あんまり人間びいきになるとジュディアに怒られるわよー!」
ジュディア……そういえば、私が堕天する前に「人間に毒されるな」と言っていたな。
「私は、人間に毒されてなどいないさ。ただ、思っていたよりも愚かではないと理解しただけだ」
私は、そう弁明した。
「はいはーい。確かに、人間も一部しか見てないけど天界で言われてた程馬鹿じゃないもんねー」
天界で教えられていた人間……それは、知能が低く感情のみで動く動物。言葉を一応話すことが出来る。程度のものだった。
「天界の教えの中には矛盾したものが多かったからな」
私は、天界での勉強を思い出した。思想を統一して、感情を束縛する教え……
「ルナが反発したから、わたし達はここにいるもんねー。ルナと一緒ならどこでも楽しいけどー」
そう言ってリバレスは私を嬉しそうに見た。何が嬉しいのか?
「お前がいてくれて感謝してるよ。私の第一の理解者だからな」
私が素直にそう言うと、
「照れるわよー!」
と、小さな手で私の頭を軽く叩いた。
「天界に帰ったら、人間の誤解も解くか。ジュディアはちょっと怖いけどな」
と、私は少し大げさに肩を震わせた。
「ほんっと、ジュディアが思い詰めたらルナは何されるかわからないもんねー」
私の為を思ってだが、考えを改めさせる為に神官に密告するほどの天使だ。私が人間に毒されていると勘違いされたら怖いな。
「あいつも、一度人間界で生活したら考えも変わるだろうけどな」
私達は笑っていた。思い出話が弾む。
「セルファスやノレッジはどうしてるかしらねー?」
「セルファスは、ジュディアに言い寄ってるだろう。ノレッジはきっと次の試験で一位を取る為に勉強に必死だろうな」
私はみんなの行動が予測出来るのがおもしろかった。
「そういえば……そういえば」
次から次へと思い出話が出てきた。
今思い返すと、友人と過ごした天界での生活も楽しく思えた。あんなにも、自由の無い世界が嫌いだったのに不思議なものだ。