「……フィーネ、ここは任せた。私のサポートをするのが役目だろ?」
私は、フィーネにだけ聞こえるように囁いた。
「えぇー!そんなぁ、待ってくださいよぉ!」
フィーネは、物凄く困った顔をしたが、『それは私の役目』と納得したのか、街の人々に話をすることにしたようだ。
「(頑張ってねー!)」
指輪に変化したリバレスが、面白がってフィーネに意識転送(テレパシー)を行った。
「あれ!?リバレスさん!?」
フィーネは驚いてキョキョロ辺りを見回したが、姿が見えるはずもない。
「それでは、フィーネさんお話を!」
街の男の一人が黙っている私を見て、フィーネにそう叫んだ。
「はいっ!それでは」
フィーネは、私の人間離れした部分は一切話さずにうまく人間達に話をしていった。リバレスの存在も隠していた。私は少し記憶を失った旅人とされた。よくも、そんなにうまく嘘をつけるものだ。しかし、フィーネはどうやら必死に嘘をついているようで、少し冷や汗をかいているのを私は見逃さなかった。私は、酒を水のように飲み料理もたくさん食べた。酒は、天界のものより味もアルコールも劣るが料理は格段に美味い。色んな人が私達を訪れて感謝された。
始終、祝賀ムードの中で二時間ぐらいがあっという間に過ぎていった。
「(人間は、本当に楽しそうに笑いよく喋るな……私は疲れたぞ。)」
私は、呟くようにリバレスに言った。
「(じゃー、みんな酔い潰れてるし静かな場所にでも行きましょーか?)」
私は、それに無言で頷きフィーネの元に近付いた。彼女は……例外なく顔を真っ赤にして酔い潰れている。
「フィーネ、私達は先に宿に行く。後は頼んだぞ」
私は、はっきりとそう言ったが……
「ふぁい?」
そんな、間の抜けた返事しか返ってこなかった。
「……(泥酔か)まぁ、あれだけ皆に飲まされれば当然か」
私には、街人達が酔っているのが滑稽だった。私には、人間界の酒は水と大差ないと思えるからだ。
「(天界では、ESGの他にたまに美味しいお酒が振舞われるもんねー)」
「(そうだな。あの酒は美味いけど、一杯飲んだだけで天使も酔う程の強さだったな。)」
私とリバレスは少し思い出話をした。今では、天界の存在がとても遠くに感じる。
「フィーネ、酔いが醒めたら来るんだぞ」
私は、彼女に理解できているのかどうかもわからないまま宿へと向かっていった。