フィーネはとても嬉しそうに、私の手を握り満面の笑みを湛えていた。
「ルナー!だから行くなって言ったのよー!」
リバレスは困り顔で私の肩に停まった。
「……こうなった以上仕方ないだろ?」
「もー!相変わらず甘いんだからー!(でも、それがルナのいい所なのよねー相手が人間なのが困り者だけど)」
「ん?リバレス、何か言ったか?」
私は、今リバレスが言った最後の方の言葉を聞き取れなかった。
「何でもないわよー!」
リバレスは私の子供のようでいて、時に母のように振舞う。世話焼きの彼女がいれば、この先も安心だ。
「私は、人間に甚大な被害を与える魔物だけを排除する。その代わりにさっき言った条件と、私とリバレスの事を決して他人に口外せず、また、正体を聞いてはいけないこととする。いいな?」
リバレスは困り顔だったが、もう呆れ顔で私の考えを認めてくれているようだった。そして、
「はいっ!張り切って、ルナさんとリバレスさんのお世話をさせて貰います!手始めに、今晩はおいしい物を作りますよ!」
と、フィーネは元気一杯で答えたのだった。
この日の彼女の家で食べた料理はとてもおいしく、量も半端では無かったが私は空腹だったため、全て食べ尽くした。
それを羨ましそうに見守るリバレスの姿も、どこか楽しげに見えた。
これから待ち受ける過酷な試練と、今までとは全く異なった日常には不安もあったが、正直期待も大きかった。
まるで、囚人のように勉強と試験を繰り返し、自由にも生きられなかった天界の時とは全く違う。
今日の事も明日の事も全く予想ができない。そして、何より全てが自由に出来る事が嬉しかった。
また、この一晩でフィーネの話を聞いて、人間界の事がリアルに伝わってきた。人間が、どれだけ『魔』を恐れて生きてきたか。
そして、どんな生活をしてきたか……
今日は少し空を見て眠ろう。明日の事はわからない。
そして、自由な一日一日を大切にしよう。
200年は長いけど、何とかやっていけるような
気がした。
私は、眠っているリバレスとフィーネから離れて
一人で夜空に浮かぶ月を眺めていた。
そして、これから先の私達の人生の幸福を願って
眠りに就いたのだった。