そんなやりとりが続いていると、船はいつの間にか港に停泊していた。船員に呼びかけられて、私達は急いで下りた。
「ここがフィグリルの街か……え!?」
港から、街への入り口に入ろうとして私はある事に気付いた!
「どうかしたんですか?」
フィーネが首を傾げて、私に尋ねた。それもそうだ、気付く筈が無い。
「(これはどう見ても、結界よねー)」
そうだった。これは結界だ。街の入り口のアーチから下……いや、地面から結界が張られている。違う!街全体が結界に覆われているのだ!街の直径は軽く4kmはあるだろう。その全てが結界に包まれているのだ!途方も無い力だ!
「フィーネ、この街は魔物に襲われたりしないだろう?」
私は驚きを隠せず、私の目が正しいかどうか確認する為にそう訊いた。
「はい、フィグリルの街は世界一安全だって聞きますから……それがどうしたんですか?」
やはりそうだった。この結界は、魔を通さないようにする為の強力な結界。こんな結界を張れるのは……
「この街には、強大な力を持った天使がいる。噂の神官がそうかもしれない」
私は、天使がいるという推測……いや確信をフィーネに語った。救いをもたらす神官が天使?それにしては、こんなに強力な力を持って堕天したという天使を、私は聞いた事がない。それよりも、今現在……人間界にいる天使は私だけなのに……頭ではそう思っても、この結界を見ると天使の仕業としか思えなかった。
「それなら、早く会いに行きましょう!きっと、私達の事を助けてくれますよ!」
フィーネは結界を越えて走っていった。全く……その癖は直らないんだな。私は溜息をついてフィーネを追いかける。
辺りはすっかり暗くなって、街には街灯が灯っていた。走る地面は整然と舗装されており、天界のそれを彷彿とさせた。また、街灯に照らされる白亜の家々は、まるで大理石のように美しかった。走っていく中で、家の窓から見える家庭の風景が温かかったのが印象的だった。