私達が恋人になって二人だけで過ごす一日が欲しい……私も本気でそう思った。この街を出れば、再び戦いの日々が始まり楽しい時を送るのが困難になる。戦いは明日からにすればいい……それぐらいは許されるはずだ……
「よし!今日は、一日フィーネの日にしよう!」
こうして、この日だけは魔の事や戦いの事……辛い事などを全て忘れて楽しく過ごす事にした。可哀想だが、リバレスは宿に置いて……
私とフィーネは、手をつなぎ肩を寄せて笑い合いながら街を歩いた。買い物をして、クレープやキャンディを食べたり……ベンチに座って、今までの話やこれからの話に花を咲かせたり……どれを取っても、一つ一つが輝く宝石のような時間だった。そして、一日の終わりに私達は夜の海辺に訪れた。風は冷たいが、優しい海の音と、零れ落ちそうな位の星々を散りばめた空が広がっている。
月もまた……たなびく雲の間から静かに海と私達を照らしていた。
「奇跡ですよね……私達がこうして二人でここにいられるのは」
フィーネは、星空を見上げて囁いた。
「そうだな。これが、奇跡でも運命でもいい……大切にしないとな」
この広い宇宙で、出会えた事に私は唯感謝するばかりだ。
「はい、私は、魔に脅かされ続けた事も……あなたに出会う為だったなら、むしろ感謝しています。もし、この世界が平和ならルナさんに力を借りていなかったかもしれないから」
フィーネは振り返って、私の顔を見つめた。フィーネの顔には少しの悲しみと大きな喜びが入り混じっていた。
「いや……例え、この世界が平和でも私は君を好きになっていたよ。絶対に」
私は、フィーネを後ろから抱き締めた。彼女が、私から離れていかないように……ずっと一緒にいられるように……
「……私はこんなに幸せでいいんでしょうか?何だか少し怖いです」
フィーネが一滴の涙を流した。こんなに優しくて素直な女性を、どうして不幸に出来ようか……
「いいんだよ。辛かった事の何倍も幸せになって……そうじゃないと、私が怒るぞ」
私は、そう言ってフィーネの髪をゆっくりと優しく撫でた……
「ルナさんは幸せですか?」
フィーネが涙を浮かべた目で少し心配そうに訊いてきた。
「あぁ、勿論だよ。今までの人生で一番幸せだ」