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 そして、私に酒の飲み比べで挑んでくる者もいたが、私は無敗だった。だが、人間界の酒であれ樽一つ分も飲んだ私は流石に酔いが回る。

「人間もいいもんだな。あんなに楽しそうに笑ってる」

 私は、少し酔いを冷ますべく神殿の端の方に座っていた。ここには誰も来ない。

「そうねー……本当に人生を楽しんでるって感じよねー」

 私とリバレスは、天界では無かったその光景を見て楽しんでいた。フィーネはとっくに酔い潰れて、私の膝の上で眠っていた。

「天使は強い力と長い命を持ってるけど、こんなにも一つの事で幸せになれないからな……短い人生でも、これだけ笑えれば幸せだろうな」

 嬉しそうな寝顔を浮かべるフィーネの髪を、私はそっと撫でた。

「……ルナさん」

 夢の中でも、私を想ってくれてるんだな。私は嬉しくなった。

「まー、堕天は200年間だし、ずっとフィーネの傍にいてあげるんでしょー?」

 その様子を見たリバレスが私の横腹を突付く。

「ああ。私はフィーネとリバレスの3人で、ずっとやって行くつもりだよ」

 私は、リバレスの頭をポンポンと叩いた。

「ルナも変わったもんねー!?わたしってお邪魔虫じゃなーい?」

 その言葉の直後、彼女は嘘泣きのような顔をする。

「お前は、私がいないと生きていけないだろ?お前もずっと一緒だから、心配するなって」

 私が、そう言うと嘘泣きの顔は消えて、満面の笑みで飛んできて、私の肩に座った。

 街中の人々は、酔い潰れて我が家へと帰っていく……夜は深まり、星空の下を私は宿へと歩いていた。無論、フィーネを抱きかかえて。

 人間界に堕ちて、2週間と少し……楽しい思い出ばかりが蘇る。これが刑なら、願っても無いな……

 私は、フィーネをベッドに寝かせてから少しの間宿のバルコニーに一人で立っていた。

 神の存在を信じていなかった私が、神に願う……

 

ずっと……この幸せが続きますように……

 

 そして、宝物の懐中時計も開いた。時刻は、午前2時38分……明日もきっと楽しいから、もう眠ろう。

 私の心は満たされていた。他に何も欲しい物は無かった。

 

 

 

しかし、無情にも『運命の歯車』は、私の願いとは関係なく

進んでいく

ゆっくり……ゆっくりと……

 

 


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